ドイツのガス高騰対策(Gaspreisbremse)とは?予算やDeutschlandticketも

2022年10月31日、専門家委員会はガス高騰が予想されるこの冬を迎える前に、対策案をドイツ政府に提出しました。このガス高騰対策案は来年2023年の3月から開始されるということでしたが、対策案が提出された翌日11月1日には、ガス高騰対策の開始時期が2月へと早まりました。

こうした動きから、今後どのような改定があるのか予想がつきにくいガス高騰対策案ですが、そもそも、このガス高騰対策案とはどのような内容なのでしょうか。

今回は、ガス高騰対策の概要と変更点など、2022年11月2日までに発表されて情報をもとにまとめました。今後のエネルギー高騰対策に関して、政府の動向を見るときの参考にしてもらえたら嬉しいです。

ドイツ政府に提出された「ガス高騰対策案」とは?

「ガス高騰対策案」で負担が大きく軽減される可能性あり

10月31日にドイツ政府に提出された「ガス高騰対策案(Gaspreisbremse)」の概要は、次の通りです。

  • 各家庭のガスの基本消費量の80%分までは、1kWhにつき12セントの価格上限を設定。
  • 残りの20%は価格上限の設定はなし。ガス供給会社の価格設定のまま支払う。
  • 地域熱供給(Fernwärme)は9.5セントが適用される。
  • ガス高騰対策案の施行されるのは2023年3月~2024年4月末

政府は前年度の消費量から9月のガス価格を1kWhにつき約21セントを予測していることからすると、この対策案で提示されている上限価格は大きな助けになると予想されます。

電気料金も高騰対策の対象に

また、電気料金も高騰することが見込まれることから、各家庭の使用量の80%に対して、1kwにつき税込み価格40セントという上限が2023年1月から設けられています。

この対策により、どのような恩恵が得られるのかと言うと、Focus Onlineによれば、電気料金なら、3人家族で年間4000kwの消費量なら、約14%減となり、年間260ユーロほど軽減されることになります。

ガス・電気高騰対策の予算は2000億ユーロ

上記のガス、地域熱供給、電気料金の高騰対策にかけられる予算は2000億ユーロであることを、11月2日の記者会見でショルツ首相は発表しました。

2000億ユーロとは、約29兆円(2022年11月2日現在)です。

大規模な予算計画ですが、この予算では足りないという見方も一部では出ています。

ガス高騰対策の開始時期が前倒しになったのは本当?

ガス高騰対策は2月から開始かも

ガス高騰対策が政府に提出された翌日11月1日、ドイツ政府は、ガス高騰対策の開始は3月以降ではなく、来年2月1日を見込むことを発表しました。同時に、ガス高騰対策の終了予定に変更はなく、2024年4月末のままだということです。

しかし、11月2日の記者会見では、この点については言及されていませんので、2月に開始になるのかは未定です。

寒さが厳しくなる冬だからこそ、ガス・電気の高騰対策を実施してほしいところですが、どのようになるでしょうか。

49ユーロチケットの名称は「Deutschlandticket」

今年2022年6月から9月までの期間限定で発売された9ユーロチケットは大好評で、5200万枚以上を売り上げました。

【9ユーロチケットとは…】
ひと月分がたったの9ユーロで、ICやICE、ECなどの長距離電車を除くドイツ国内の電車やバスなどの公共機関が乗り放題となるチケットです。

9ユーロチケットの再販売が強く求められる中で検討されているのが、49ユーロチケットの販売です。「Deutschlandticket」(意味:ドイツのチケット)と名付けられて、エネルギー対策にも有効的だと見られています。

しかし、政府からの大幅な援助がなくては「Deutschlandticket」の発売は厳しいという声が連邦各州から上がっていましたが、実施が決まりました。発売予定は、変更が出なければ、2023年1月からになります。

この「Deutschlandticket」にかかる30億ユーロの費用は、政府と連邦各州によって支払われます。

ばどほん

フランクフルト市内だけで使える1カ月定期が49,10€ですから、49€で1カ月有効の乗り放題チケットはとてもお得ですよね!

※2022年11月29日現在、連邦各州の合意がまだ得られていない状態なので、Deutschlandticketの2023年1月に販売は難しいという見通しです。

住宅手当は低所得者層向けに

光熱費の値上がりに、住宅の賃貸費用も値上げが予想されている中で、ドイツ政府は住宅手当もさらに拡大する見込みです。1月1日スタートを目安に、64万世帯がこれまでに支給されている住宅手当を2倍にします。

ドイツ政府はこの案件をすでに可決しているので、連邦議会と連邦参議院での通過待ちです。

補助金かクレジットが中小企業などに支給される可能性も

上記のガスや電気の高騰対策案だけでは厳しい文化施設などの中小企業には、さらなる対策として補助金かクレジットの支給が検討されています。

さらに、ガス以外に、オイルや木質ペレットを燃料として暖房機器を使用している施設にも、なにかしらの対策が講じられる用意があるとの報道もあります。

【新たな補助金】病院や介護施設には80億ユーロをかけて援助をする

病院や介護施設には80億ユーロをかけて援助をすると、11月2日、ラウターバッハ保険大臣が発表しました。

病院や介護施設では電気やガスは欠かすことができませんが、発表されているガス高騰対策の恩恵を受けても支払いが追いつかないと言われています。光熱費の高騰に加えて、医薬品や食料品の値上がりに人件費もかさみ、60%もの減益のある病院もあるのが現状です。

病院関係者は来年2023年1月にはこの補助金が支給されることを期待しています。

まとめ

ガスの高騰目前というこのタイミングで専門家会議からドイツ政府に退出されたガス高騰対策案。11月2日の政府と連邦各州とのミーティングでは、ガスや電気の高騰対策案や「Deutschlandticket」の発売なども確認されました。

ウクライナからの避難民の支援も抱えているドイツの懐事情は気になるところですが、物価高騰などの煽りを受けて、私たちの生活が圧迫されています。そのような状況で、こうした対策案が出てきたことにほっとしているのは私だけでしょうか。

今後もガス高騰対策案の改定案が出される可能性はありますので、もうしばらくは政府の見解から目が離せません。