【ニュースなドイツ語】「Solidaritätszuschlag」の意味とは?課税者は誰?その使い道も解説

「Solidaritätszuschlag」とは、「連帯課徴金」と訳されるドイツでの追徴課税のことです。

2023年1月30日にドイツの連邦財政裁判所は、この「連帯課徴金(Solidaritätszuschlag)は違憲ではない」と判決しました。その結果、ドイツ政府は今後も連帯課徴金により年間約110億ユーロを徴収することになります。

ドイツ政府にとって財源のひとつとなっている「連帯課徴金」ですが、そもそもどのような税金なのでしょうか。

この記事では、「連帯課徴金(Solidaritätszuschlag)」の意味や課税対象者のほかに、告訴の焦点ともなった連帯課徴金の使い道をめぐる連帯協定(Solidarpakt)についても解説します。連帯課徴金が徴収されるようになった背景には、ドイツらしい事情もあり興味深い税金制度です。

ドイツ語の「Solidaritätszuschlag」の意味とは?

「Solidaritätszuschlag」とは「連帯課徴金」のこと

「Solidaritätszuschlag」とは「連帯課徴金」のことです。「連帯課徴金」とはドイツで所得税または法人税を支払っている納税者に課せられる税金です。「Solidaritätszuschlag」の略語として、「Soli」がよく使われています。

この「連帯課徴金」は1991年に1年間に限って導入された税金でした。湾岸紛争の負担、中東および南欧諸国の支援、さらにドイツ統一のためにかかる資金(ドイツ統一基金)の財源確保という理由で、連帯課徴金は導入されました。

しかし最初の1年を過ぎても「連帯課徴金」は徴収され続けました。1995年からはドイツ統一のためにかかる財源確保のために徴収されていて、「連帯課徴金」は2023年現在も課税されている税金です。

「連帯課徴金」は高額所得者や法人が納税

2021年以降、「連帯課徴金」は、高額所得者や貯蓄枠を使い切った投資家のほかに、法人が納税します。

2021年以前は、所得税(Einkommensteuer)や給与税(Lohnsteuer)、キャピタル・ゲイン税(Kapitalertragsteuer)を支払っていた納税者に、5.5%分が連帯課徴金として課税されていました。

しかし、2021年からは特定の納税者は連帯課徴金の納税が免除されています。独身納税者は年間最大16,956€、パートナーがいて一緒に納税する連帯納税者なら33,912€の税金を納める納税者は、連帯課徴金は免除されます。そのため、現在では納税者のうち約90%が連帯課徴金は免除されていることになります。

今後も連帯課徴金の免除者の枠が広げられる予定です。

連帯課徴金が免除される年間最大の税額

 独身納税者連帯納税者
2021年~2022年16,956€33,912€
2023年17,543€35,086€
2024年18,130€36,260€

連帯課徴金(Solidaritätszuschlag)の違憲性を巡る裁判の提訴理由と判決とは?

原告側は連帯課徴金は違憲と主張

アシャッフェンブルクに住むあるご夫婦は、連帯課徴金は違憲であるとして提訴しました。その理由は、2019年に連帯協定II(Solidarpakt II)は2019年の期限付きの協定ですでに失効しているはずなのに、いまだに連帯課徴金が徴収されているのはおかしいというのが主な提訴理由でした。

【連帯協定II(Solidarpakt II)とは】

連帯協定II(Solidarpakt II)とは、2005年から2019年までの限定的な協定で、ドイツ統一基金のための財源確保が目的でした。
2004年までは連帯協定I(Solidarpakt I)が施行されていて、ドイツ統一基金として1995年から10年間に年間206億マルクをドイツ政府が旧東ドイツにあった州に資金援助することなどが盛り込まれていました。

「ドイツ統一基金」とは旧東ドイツと西ドイツの生活状況を平等にするための基金

「ドイツ統一基金(Fonds Deutsche Einheit)」とは、旧東ドイツと西ドイツの生活状況を平等にするための基金です。現在でも連邦政府は旧東ドイツだったベルリン、ブランデンブルク、メクレンブルク=フォアポンメルン、ザクセン、ザクセン=アンハルト、チューリンゲンの州は、旧西ドイツだった州と比較すると生活面で平等ではないと考えられていて、ドイツ政府は経済的な支援を行っています。それを「ドイツ統一基金」と呼んでいます。

判決:連帯課徴金は違憲ではない

2023年1月30日に出された連邦財政裁判所は、提訴された2020年と2021年の連帯課徴金は違憲ではないと判決しました。その理由は、連帯協定が期限切れになっていることを認めたうえで、ドイツ統一基金の財源が必要であり、現在では高額所得者と法人のみの徴収していることなどを挙げました。

原告側は一部の納税者だけが連帯課徴金を納税するのは不平等だとも訴えましたが、裁判所側は、富欲層だけが連帯課徴金を支払うことは社会的な観点から不平等だとは考えられないとして退けました。

まとめ

「Solidaritätszuschlag」とは「連帯課徴金」のことで、現在ではドイツ統一基金の財源として徴収されています。納税者の90%以上が免除されていて、主に高額所得者や法人などに課税されています。

連帯協定IIが失効していることやることやの一部の富欲層のみがターゲットとなっている税金のため訴訟も起きましたが、連帯課徴金の徴収制度に違憲性はないと判決が下りました。

今後は連帯課徴金の課税対象者は納税額に応じてさらに狭められていく予定ですが、ドイツ統一基金は必要とされているのが現状で、連帯課徴金がなくなることはもうしばらくないように思われます。