【ドイツ選挙2021】開票結果・SPDとCDUの特徴とは?首相候補者と連立の種類

メルケル首相の後任決定に大きく影響するドイツの総選挙が9月26日に行われました。

投票率は76.6%という高い投票率からも今回の選挙への注目度がわかります。

政権が交代すれば社会情勢にも大きく影響するので、ドイツに住んでいる方にとって気になる問題ではないでしょうか。

この記事では、9月26日に行われたドイツ連邦議会(下院)の選挙結果のほかに、ドイツの選挙制度や次期首相候補者とされるSPDとCDUの各党首についても紹介します。

【この記事をおすすめの方】
 2021年ドイツ連邦議会選挙の結果を知りたい方
〇 ドイツの2大政党SPDとCDUのことを知りたい方
〇 連立政権の意味を知りたい方
〇 首相候補者がどんな人かを知りたい方

2021年ドイツ連邦議会選挙の結果とは?

【開票結果】SPDが首位!だが、CDU/CSUと接戦

出典:ZDF

9月26日に投票が行われたドイツ連邦議会選挙では、SPDが第1党になりました。

メルケル首相が所属しているCDUが8.8%、つまり50議席を減らし第2党となったのですが、その差はわずか1.6%です。

また第1党となったSPDも議席の過半数の獲得には至らなかったので、ほかの党との連立を図る必要があります

緑の党の躍進、FDPも

今回の総選挙で緑の党(Grüne)が5.7%多い51議席を増やしたことは大きな変化のひとつと言えます。

ただ、緑の党はもっと議席を増やせたという憶測も広がっています。なぜなら緑の党は数カ月前の事前調査ではもっと高い支持率を得ていたのです。
しかし、ベアボック党首の経歴誇張や論文の盗用問題が発覚して、支持率の大きく影響したと言われています。

またFDP(自由民主党)も0.8%増ながら、議席数では92議席も増えたので、両党ともSPDまたはCDUと連立する意欲を見せています。

「SPD」と「CDU」とは?

今回の総選挙で争ったドイツの二大政党の「SPD」と「CDU」。

ここでは各党の特徴を簡単にまとめましたので紹介します。

「SPD」とは中道左派政党

「SPD」とは「Sozialdemokratische Partei Deutschlands」の略称で、日本語では「社会民主党」と訳されます。中道左派で、2013年からCDUと組んで大連立政権を行ってきました。

1875年に発足したドイツ社会主義労働者党が1890年にSPDに改名したドイツで最古の政党です。市場経済での労働者の権利を重視して、ドイツの福祉国家という一面を育ててきた政党とも言えるでしょう。

1969年にはFDPと連立してブラント首相を、1998年には緑の党と連立してシュレーダー首相が出ています。

「CDU」とは保守派政党

「CDU」とは「Christlich-Demokratische Union」の頭文字をとっていて、日本語では「キリスト教民主同盟」と訳されます。

CDUはメルケル首相が所属する保守派政党で、バイエルン州を地盤とする姉妹政党のCSU「キリスト教社会同盟」と一緒にドイツ政治を独占してきました。

1945年の米・英・仏・ソによる連合国による占領下で発足し、キリスト教民主主義、自由主義、社会保守主義を主張してきました。これまでにアーデナウア―首相やキージンガ―首相、コール首相を出してきた政党で、政権をけん引してきました。

次期首相候補は誰?「信号機連立」と「ジャマイカ連立」

連立次第で首相が決まる

今回の総選挙での結果から第1党でのSPDも議席の過半数を得られなかったため、連立与党という政治体制になります。

では、どのような連立が考えられるのでしょうか。

「信号機連立」= SPD + 緑の党 + FDP

「ジャマイカ連立」= CDU + 緑の党FDP

ばどほん
信号機にジャマイカって政治の話じゃないみたいですよね。

それでは、それぞれの連立の特徴と難点のほかに、注目される次期首相候補者についても見ていきましょう。

SPDと連立「信号機連立」

「信号機連立」= 「SPD」+「 緑の党」+ 「FDP」

「信号機連立」とは、SPD・緑の党・FDPが連立を組んだときの呼称です。

SPDの赤、緑の党の緑、FDPの黄色の各党のシンボルカラーを組み合わせるとドイツの国旗色になることにちなんだネーミングです。

総選挙第1党となったSPDとの連立になるため注目の連立ですが、SPDと緑の党は富欲層に対する増税案を推し進めたいのに対して、FDPは増税案に反対、また歳出拡大にも反対していることから連立は難しいかもしれないと言われています。

【首相の座に近い首相候補者】SPD党首「オラフ・ショルツ氏」

オラフ・ショルツ(Olaf Scholz)氏は、現メルケル政権で財務省と副首相を兼任している政治家です。

ショルツ氏は冷静沈着な物言いから演説が地味、カリスマ性に欠けるなどの人気が今一つと言えます。

しかしコロナによる経済打撃を回避するための景気対策や、社会格差を是正するために富裕層への増税や最低賃金を12€に上げるの方針を掲げて、客観的な分析力と実務面での行動力において評価を得ています。

今回の選挙結果に関して、ベルリンでの演説で「満足している」と述べています。

CDUと連立「ジャマイカ連率」

読者さん

あら、CDUは第2党だから政権は取れないんじゃないの?

ごもっともなご意見なのですが、総選挙の結果が第2党であっても、まだ政権をとれる可能性が残されているのです。

その最も可能性がある連立と言われているのが、「ジャマイカ連立」です。

ジャマイカ連立=CDU/CSU+緑の党+FDP

「ジャマイカ連立」とは、CDU/CSU・緑の党・FDPが連立したときの呼称です。

CDU/CSUの黒、緑の党の緑、FDPの黄色と、それぞれのシンボルカラーを組み合わせるとジャマイカの国旗色になることから名づけられました。

CDUとFDPは経済面などで意見を一致している部分も多く連立できる可能性があります。

またCDUと緑の党は、環境保護に関して意見が対立しているときもあったのですが、妥協案を出せる関係となっていて連立できる一面があります。

前回の2017年の選挙後にもメルケル首相はジャマイカ連立を試みましたが、半年かけて交渉したものの連立にいたりませんでした。
その結果、SPDとの大連立という策がとられたのです。
しかし現状ではドイツの州によってはCDUと緑の党で連立している州もあり、状況は変わってきています。

【首相の座に近い首相候補者】CDUの党首「アルミン・ラシェット氏」

アルミン・ラシェット(Armin Raschet)氏は、2017年からノルトライン・ウェストファーレン州の州首相となり、2021年1月からメルケル首相の属するCDUの党首になった政治家です。

メルケル政権の後継者として注目されるラシェット氏は政治経験もあり、選挙中には経済成長を重視することを強調してきました。

しかし、7月のドイツ西部の洪水被災地を訪問したときに談笑する姿が報道されると人気が急落したと言われています。

今回の選挙で第1党になれない予想が出されると、「結果には満足できない」と演説で語っています。

ほかに考えられる連立「ケニア連立」と「ドイツ連立」

ほかに考えられる連立に「ケニア連立」と「ドイツ連立」です。連立する可能性は信号機連立やジャマイカ連立よりも低いとされていますが、連立に難航した場合に浮上してくる可能性のある連立です。

「ケニア連立」
「ケニア連立」とは、SPDとCDUと緑の党の連立です。

「ドイツ連立」
「ドイツ連立」とは、SPDとCDUとFDPの連立です。

ただ「ケニア連立」と「ドイツ連立」は、SPDとCDUが組むことはメルケル首相でもあったのですが、決して折り合いがいいとは言えません。

SPDは第1党になったので、CDUなしで政権をという考え方が強まっています。

ばどほん

選挙速報番組に出演したCDUとFDPの党首が手を組むようなことを匂わせていましたから、どうなることでしょう。

まとめ

2021年ドイツ総選挙を駆け足でまとめてみましたが、いかがでしたか。

SPDが戦後最高の特徴率で第1党になるという劇的な展開があった半面、CDUとの僅差ということもあり、連立次第でどの党がドイツ政権を担うのか、まだわかりません。

注目は「信号機連立」と「ジャマイカ連立」ですが、これもまたどうなることでしょう。

もうしばらくはドイツ政権の動向に目が離せません。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。では、また!