【承認停止】「ノルドストリーム2」とは?ロシア・ウクライナとの関係と現状を解説

ロシアがウクライナ東部の一方的な独立を宣言して、ウクライナ侵攻を受けて、2月22日にドイツは天然ガスのパイプライン「ノルドストリーム2」の承認を辞めることを発表しました。

ウクライナ情勢とガスのパイプラインがどのように関係するのでしょうか。

ご存知の方もいるかと思いますが、今回は、「ノルドストリーム2」とウクライナ情勢との関係について、わかりやすく解説していきたいと思います。

「ノルドストリーム2」とその問題とは?

「ノルドストリーム2」はドイツとロシアを結ぶガスパイプライン

「ノルドストリーム2(Nord Stream 2)」はロシア産の天然ガスをドイツに供給するための、海底に敷かれたパイプラインです。

ドイツでは原子力発電所や石炭火力発電所の閉鎖を推し進めている真っただ中で、天然ガスはドイツ経済を支えるためにも確保したい資源です。環境問題にも配慮できるため、ドイツは積極的にノルドストリーム2の建設を進めてきました。

アメリカの液化天然ガス輸出に歯止めをかけられる懸念

ただし、ノルドストリーム2の建設に関しては、アメリカが以前から問題視してきました。その理由は、ノルドストリーム2が完成してガスの供給が始まれば、ロシアへの依存度が高くなるだけでなく、ロシアが政治的に、また経済的に潤うことになることを懸念していたのです。

また、アメリカはヨーロッパに液化天然ガスを輸出したいという計画もあり、ノルドストリーム2の建設計画をあまりよくないこととして捉えていました。

ノルドストリーム2でウクライナが損をする

ノルドストリーム2の建設計画は、ウクライナも反対しています。その理由は、ノルドストリーム2が完成すると、ロシアからドイツに天然ガスを輸送する際に支払われる輸送料が得られなくなるからです。

またドイツとロシアが関係が密になることで、ウクライナが孤立してしまうという憶測もありました。これに関しては、EUだけでなく中東欧諸国も反対しています。

EUは、ノルドストリーム2の建設に反対する意思表示として、天然ガス指令を改訂して、ガス供給業者とパイプラインの運営会社を分けることを取り決めました。これにより、ノルドストリーム2事業の妨害を狙ったのです。

「ノルドストリーム2」の現状は?

ドイツはノルドストリーム2の承認停止

2022年2月22日、ドイツはノルドストリーム2の承認を停止することを発表しました。その背景には、ロシアが21日にウクライナ東部を一方的に独立、つまりウクライナ東部を国家として承認したことがあります。

ノルドストリーム2の承認停止を決めた理由として、ショルツ首相は22日に会見の席で、危険を回避するために処置であると発言しています。

“Es ist unsere Aufgabe, eine soleche Katastrophe abzuwenden, und ich appelliere erneut an Russland, dabei zu helfen.”
(意訳:大惨事を避けることが私たちの課題であり、あらためてロシアに協力を要請する)

引用元:Kanzler Scholz: Deutschland stoppt Nord Stream 2 – ZDFheute

ノルドストリーム2はすでに完成済みで承認待ちだった

ノルドストリーム2は昨年2021年9月にすでに完成しています。承認さえ下りれば、すぐに天然ガスの供給ができる準備ができていました。

しかし11月16日にノルドストリーム2の運営をする会社がドイツの法律にのっとり設立されていないことから、承認は停止されました

承認には、スイスで設立されていたノルドストリーム2の運営会社ではなく、その運営会社の子会社をドイツに設立して、同小会社がパイプラインのドイツ国内での所有権と運営が条件に出されました。

それ以降、この子会社設立と運営権などの移管などが進められていました。

ウクライナ情勢とは?

ロシアの勢力維持を意味している

では、ここでドイツがノルドストリーム2の承認停止を決めたきっかけになった出来事、ロシアのウクライナ東部の独立について目を向けてみましょう。

なぜ、ロシアはウクライナ東部の独立を承認したのでしょうか。ウクライナはロシアの属国ではないのに、どうしてこのような宣言ができたのでしょうか。

その理由は、ロシアはウクライナをロシアの管理下に置いていると考えています。それに対して、ウクライナは自国は独立しているという認識の違いがあります。さらに、ウクライナはNATOに加盟することを望んでいます。これは、ウクライナが対ロシアの姿勢を見せているということ、またロシアはNATOが東方へと勢力を伸ばすことに危機感を覚えています。

その対策として、ロシアは一方的にウクライナ東部を独立させて、承認直後に軍事力を行使したというわけです。

ウクライナ東部はロシア文化が色濃く残る地域

ウクライナ東部とは、ロシア文化が色濃く残る地域です。ロシアと国境を接していて、ロシア系の民族も多く住んでいます。鉄工業が盛んな地域ですが、それはソビエト時代に開拓された炭鉱などが今でも使用されています。

また親ロシア派の武力勢力も占拠していて、2014年にはロシア政府に支援された親ロシア派勢力が州政府庁舎などを占拠したため、ウクライナの政府軍が対立する事件なども起こっています。

この事件は、ロシアがクリミアを一方的に併合するとしたことがきっかけになりました。

まとめ

ロシア産の天然ガスをドイツへと供給するためのノルドストリーム2はすでに完成しています。しかし、ウクライナ情勢の危機のため、ショルツ独首相はこのパイプラインの承認を停止すると発表しました。

承認を受けられないパイプラインは、もちろん稼働することはありません。

今後のロシアの動き方次第でパイプラインの今後の見通しも変わってくることになるのでしょうが、現状では厳しい模様です。

ただドイツとしては天然ガスを輸入したいわけで、パイプライン承認停止のままで終わることはないのではないでしょう。

今後のウクライナ情勢とあわせて、ノルドストリーム2がどうなっていくのかが注目されます。

 

以上、ノルドストリーム2とウクライナ情勢についてでした。

最後まで読んでいただきありがとうございました。では、また!