「聖木曜日(洗足木曜日)」の意味と由来とは?最後の晩餐でキリストが弟子の足を洗った理由

イースターの聖日のひとつ「聖木曜日(洗足木曜日)」は、キリストが十字架につけられる前日のことです。最後の晩餐が開かれた日としても知られていますが、「洗足木曜日」という別称があり、どのような意味があるのでしょうか。

この記事では、「聖木曜日(洗足木曜日)」の意味と由来のほかに、最後の晩餐でイエス・キリストが弟子の足を洗った理由のほかに、ドイツ語と英語表現とそれぞれの意味についても解説します。

「聖木曜日」の意味とは?

「聖木曜日」とは「最後の晩餐の日」

「聖木曜日(せいもくようび)」とは「イエス・キリストがキリストの12人の弟子と夕食をともにした日」で、「最後の晩餐をした日」としても知られています。最後の晩餐が開かれたのはイエスキリストがエルサレムに入城した4日後のことです。最後の晩餐が行われた次の日に、イエス・キリストは十字架につけられます。

この晩餐はもともとエジプトからの解放を思い起こすためのユダヤ人の祭り「過越の祭り(すぎこしのまつり)」のお祝いの一環として行われていました。

しかし「最後の晩餐」として語られるこの食事はお祭りの一環としての食事としてではなく、イエス・キリストが弟子である12使徒との別れの晩餐となったため特別な意味がありました。最後の晩餐中にイエス・キリストはパンはキリストの体を、そしてワインはキリストの血の象徴であることを表し食されます。

このパンと血がキリストの死後もキリストが生きていることの証として、キリスト教では息づいています。

別称「洗足木曜日」の読み方は「せんそくもくようび」

聖木曜日の別称は「洗足木曜日」で、「せんそくもくようび」と読みます。「洗足」は濁らずに「せんそく」と読むことに注意しましょう。

「洗足木曜日」の呼ばれる理由は、最後の晩餐でイエス・キリストが12使徒たちの足を洗ったことに由来しています。

イエス・キリストが弟子の足を洗った意味

なぜイエス・キリストは弟子たちの足を洗ったのでしょうか。

当時の習慣として、訪れたゲストをいたわるために足を洗う習慣がありました。でも、イエス・キリストが弟子たちの足を洗った理由には、単なる習慣ではありません。

新約聖書の中の「ヨハネによる福音書13章14~15節」には、次のような記述があります。

ところで、主であり、師であるわたしがあなたがたの足を洗ったのだから、あなたがたも互いに足を洗い合わなければならない。
わたしがあなたがたにしたとおりに、あなたがたもするようにと、模範を示したのである。

イエス・キリストが弟子の足を洗うことで、キリストは弟子たちへの愛を伝えたかったのかもしれません。また本来なら奴隷がすることでも師であるキリストが足を洗うことで、キリストの謙遜さも表しているとも考えられます。

実は、この最後の晩餐が行われる前に、弟子たちは誰が1番なのかと言い争っていました。これを聞いたイエス・キリストはそのような議論は愚かであるということを伝えたかったのかもしれません。誰か1人突出するのではなく、誰もが同じように振る舞い、同じように神を愛し慕うべきだということを、イエス・キリストは「足を洗う」という行為によって示したかったとも考えられます。

さらには、「洗う」という行為から「罪を流して償う」という意味も考えられます。キリスト教の信念のひとつである隣人を愛し、人の罪を許すことの具体的な表現とも言えるでしょう。

聖木曜日のドイツ語と英語表現は?

「聖木曜日」はドイツ語で「Gründonnerstag」

「聖木曜日」はドイツ語で「Gründonnerstag」です。「Gründonnerstag」は直訳すると緑の木曜日になりますが、“Grün”は緑という意味ではないというのが有力な解釈です。

では どうして聖木曜日が緑の木曜日と呼ばれるようになり、“Grün”にはどのような意味なのでしょうか。

諸説あるのですが、ひとつは“Grün”が「泣きごと」や「泣く」という意味の中高ドイツ語“greien“か“grienen“に由来しているという説です。聖木曜日を「Gründonnerstag」と名付けることで、「イエスの死を悲しむ」という意味を持たせました。

次に“Grün”は「緑の贖罪者」という意味で、キリストによる贖罪でキリスト教徒は罪から解放されたことを指して「Gründonnerstag」と名付けられた説です。四旬節に行っていた断食から解放されたという意味も考えられます。

さらには、イースター前の日曜日「棕櫚の日」から続いて“Grün”はヤシの木の枝を指しているという説もあります。

“Grün”については様々な解釈があり、どの説が正しいのかはわかっていません。

「聖木曜日」は英語で「Maundy Thursday」

「聖木曜日」の英語表現は「Maundy Thursday」です。「maundy」とはラテン語の「mandātum」を由来とする古フランス語の「mande」が語源です。その意味は、「指令」や「命令」で、後に英語の「mandate」という単語になりました。

聖木曜日の過ごし方とは?

聖木曜日は静かに過ごす

聖木曜日は静かに過ごす日です。ドイツでは大騒ぎをするようなイベントなどは開かれません。ただし、バイエルン州など一部の州においてスポーツイベントは許可されていますが、スポーツイベントも禁止している州もあります。

聖木曜日は祝日ではない

ドイツで聖木曜日は祝日ではありませんので、お店などは通常通りに営業しています。

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まとめ

「聖木曜日」とはイエス・キリストと12使徒による最後の晩餐が行われた日だと考えられています。イエス・キリストが12使徒の足を洗ったことから、「洗足木曜日」とも呼ばれます。

聖木曜日の翌日にイエス・キリストは十字架にかけられて人々の罪が許されたと考えるキリスト教徒にとっては、この日を境にキリストの死を悼んで過ごした四旬節(断食)が終わることになります。