なぜドイツ人の引越し祝いは「パンと塩」? 引越しの挨拶はしなくてOK

ドイツ人は引っ越し祝いに「パン」と「塩」を贈るという習慣があります。引っ越し祝いに実用的なものを贈るのがいいというのはわかるのですが、それにしても「パン」と「塩」とはあまりにもシンプルなように思います。

今回は日本とドイツの引越し祝いの違いのほかに、なぜドイツ人が引っ越し祝いにパンと塩を贈る習慣が生まれたのかを解説します。また、引っ越しの挨拶は必須でないことも紹介します。

日本とドイツの引越し祝いの違いとは?

日本とドイツでは引越し祝いを渡す相手が違う

日本の引越し祝いとは、お世話になった相手などの親しい関係の相手が引っ越すことになった時、日ごろの感謝の気持ちを込めて渡す贈り物のことを指します。

一方ドイツの引越し祝い(Geschenk zum Einzug, Einzugsgeschenk)とは、引越しをしていく相手に渡す贈り物のことを指しません。そもそも引越しをしていく相手に贈り物を渡す習慣はありません。

ドイツで引越し祝いというと、引っ越しを済ませた相手に贈る贈り物のことを指しています。

日本の引越し祝いは実用的なもの、ドイツではパンと塩

日本の引越し祝いには、相手の新生活に役立つ実用的なものが選ばれることが多いでしょう。タオルや食器のバス・キッチン用品のほかに、ギフトカードやカタログギフトなども喜ばれます。親しい間柄なら現金が贈られることもあるでしょう。

一方、ドイツでは「パンと塩」が伝統的な引越し祝いです。ただ「パンと塩」ではありきたりなので、伝統的ではない贈り物としてギフトカードや現金を贈ることも増えてきました。また引越しを祝うという意味で、ワインなどの酒類も人気があります。

ドイツ人が引っ越し祝いに「パンと塩」を贈る理由とは?

「パンと塩」が生活必需品の象徴だから

ドイツ人が引越し祝いとして「パンと塩」を贈るようになった理由は、パンと塩がある家とは、食べ物が十分にあると考えられるためで、「パンと塩」が生活に必要なものの象徴だからです。

「パンと塩」を引越し祝いに贈ることで、相手が新しい生活で物質的に、そしてメンタル面でも満たされて幸せになってもらいたいという想いが込められています。

パンと塩を贈る習慣は中世に始まった

パンと塩を贈る習慣は、中世にすでにあったと言われています。当時は、自然災害や農作物の不作、または戦争なども起こり、日用の糧であるパンと塩も常に手に入るとは限りませんでした。そのため、パンと塩は現代以上に大切に扱われていたと考えられます。

パンと塩は天からの贈り物

またキリスト教において、「パンと塩」は天からの贈り物と考えられていただけなく、空腹や飢えを象徴をしているとも考えられています。「パン」はキリストの肉体という意味があり、また「塩」は地の塩という聖書にしるされた表現の略語で、変わらないものや優れたものことで、愛や慈悲という意味もあります。

ドイツで引っ越ししたら挨拶はするべきなの?

ドイツに引越しの挨拶をする習慣はない

ドイツでは引越しの挨拶をする習慣はありません。

ドイツに10年以上暮らして、引っ越しもこれまでに4,5回しましたが、日本でするような引越しの挨拶をしたことはありません。非常識ではないのかと心配したのですが、私の知り合いのドイツ人たちに聞いても、引っ越しをしたからといって引っ越し先ご近所を回って挨拶に行くようなことはしたことないと言います。しかも引越しの挨拶としてプレゼントを持っていくなんてありえないそうです。

私も近所に新しく引越ししてきた人から挨拶を受けたことはありません。

アパートの共同玄関などでたまたますれ違い、それが新しい住人だとわかった時に、軽く挨拶をすることはあっても、わざわざ挨拶に行くようなことはありません。

引越しの挨拶はされたら嬉しいかも

ドイツには引越しの挨拶の習慣はありませんが、日本には引越しの挨拶をする習慣があることを伝えると、一様に「そういう習慣は悪くないかも」という反応が返ってきました。

「引っ越してきたから、顔見知りになるために、プレゼントをもって来てくれるの?それってうれしいかも。嫌な気分はしないな」というのが、ドイツ人たちの返答でした。

もしかしたら、ドイツ人も引越しの挨拶をされて悪い気はしないのかもしれません。ただし、引越しの挨拶をする習慣がありませんから、丁重に挨拶をしたほうがいいでしょう。たかが同じ建物の中に住んでいるというだけで挨拶に来て、さらにプレゼントまでくれるなんて、親切な人だと受け取られるか、もしくは迷惑になるようなことを頼んでくる嫌な隣人かもと疑われるかもしれませんので。

まとめ

ドイツで引越し祝いと言えば、引越しが終わった人に贈るプレゼントです。実用的なギフトカードなどが贈られることもありますが、伝統的な贈り物は「パンと塩」です。十分に満たされて幸せになれるようにという気持ちを込めて、引っ越した相手にパンと塩を贈ってみてはいかがでしょうか。