先日2023年2月22日、「ドイツの連邦統計局は1月の消費者物価指数(CPI)は前年同月の数値と比べると8.7%に上昇した」という報道がありました。続けて、「エネルギーと食品のCPIが特に上昇していて、インフレ率に影響を与えている」ともありました。
ところで、このニュースで出てきている消費者物価指数(CPI)とは、どのような意味で、何を指していているのでしょうか。またCPIとインフレ率との関係は?
今回は、消費者物価指数(CPI)の意味とインフレ率との関係について解説していきます。これらの数字が、私たちの生活状況について何を説明しているのかを読み解いていきましょう。
「消費者物価指数(CPI)」の意味とは?
「消費者物価指数(CPI)」とは「消費者が購入した商品などの価格の指標」
「消費者物価指数(CPI)」とは、「ある一定の期間に消費者が購入した商品やサービスの価格を指標化したもの」です。CPIとは、英語の「Consumer Price Index」の頭文字を取った略語です。
具体的に説明すると、2023年1月のCPIなら、2023年1月に消費者が購入したコーヒーや牛乳、シリアルなどの食品や衣料品、雑貨のほかに、住まい賃貸料や医療費や通信サービス、輸送費用やガソリンに支出した分を合わせて、その変動率を測定したものです。
ドイツのCPIは、連邦統計局が毎月公表しています。コロナパンデミック以降、ウクライナ戦争もあり、経済状況を知る上で、CPIには注目が集まっています。
CPIは基準時の指数を100として算出
CPIは基準時を100として、算出していきます。ドイツの2023年1月のCPIは8.7%と発表されましたから、これは基準年となる2020年1月を比べる108.7だったことを示しています。
消費者物価指数(CPI)が上がるとインフレ傾向に
CPIが上がるということは、インフレ傾向となり物価の上昇が考えられます。需要、つまり消費者が欲しいという欲求が高まるため、商品やサービスを提供する企業はその価格を上げる、値上げをしやすくなります。
しかし値上げをされると消費者からは不満が出てきます。昨年の2022年6月もCPIが前年同月から比べると8.2%に上昇しました。その際には、ドイツ政府がテコ入れをして、エネルギー価格の高騰対策として燃料税の引き下げを行いました。また公共交通機関の1ヶ月9ユーロチケット実施も記憶に新しいところではないでしょうか。
消費者物価指数(CPI)とインフレ率の関係は?
消費者物価指数(CPI)からインフレ率が計算される
インフレ率は、CPIを使って算出します。現在のCPIから基準時となるCPIを引いて、その結果を基準時のCPIで割って100をかけます。
<インフレ率の計算式>
インフレ率={(現在のCPI-基準時のCPI)÷基準時のCPI}×100
「インフレ」とは価格の上昇のこと
「インフレ」とはインフレーション(Infration)の略語で、商品やサービスの価格が上がることです。物価上昇と聞くと、悪いイメージがあるかもしれませんが、良いインフレもあります。
「良いインフレ」では、物価上昇に伴い企業が儲かることで、社員の給与が上がります。その結果、消費が増えるという経済が良い状態で回ることが考えられるからです。「景気の拡大」といった形でインフレが反映されていきます。
一方、「悪いインフレ」もあり、商品の仕入れ価格が上がっていても商品価格として値段を上げられないと、商品販売を通して企業の利益は減るため、給料も上がらないという状況になることがあります。また物価が上がっても給料が上がらないため家計を圧迫するというのも悪いインフレの1例です。
22年1月ドイツのCPIと23年1月のインフレ率が示すこととは?
2022年通年のCPI「6.9%」は2020年を基準にして算出
2022年通年のドイツの消費者物価指数(CPI)は6.9%と発表されているのですが、これは予想よりも低い数値になりました。その理由は、基準年が変更されたからです。
統計局は5年事にCPIを比較するときの基準となる年「基準年」を変えています。2023年1月以降に基準年を2015年から2020年に変更しました。そのため、CPIは予想よりも1ポイント下がった6.9%と発表されたのです。
2020年と言えば、コロナが爆発的に広まったパンデミック・イヤーです。この年の経済状態を思い起こせば、2020年を基準にした22年のCPIは2015年と比べると低くなったと言われても、納得がいくのではないでしょうか。
2023年1月のインフレ率「8.7%」はピーク時に近い数値
2023年1月のインフレ率は去年の同月と比べると「8.7%」、つまり前月との比較では1%上昇と統計局は発表しています。この「8.7%」はピーク時に近い数値になります。
これほど高い水準を見せた理由は、全般的な物価の上昇の中でも、特に価格上昇が顕著なエネルギーと食品への消費が原因だと見られています。
2023年1月の食品のインフレ率は20.2%で前月の20.4%とあまり変わっていませんが、普段のお買い物でバターやミルクが高いな、パンやオイルも、と思われている方は少なくないのではないでしょうか。
エネルギーは前月よりも3%ほど高い23.1%にもなっています。ウクライナ戦争が要因となり、ロシア産のガスの供給が止まるなどして、天然ガスや地域暖房が値上がっています。また巻きなどの固形燃料に暖房用の油、そして電気料金の値上げなど、エネルギー関連への大きな影響が続いています。