ドイツの「ギムナジウム」と日本の中学・高校との違いとは?

ドイツでは小学校を卒業すると進学する学校のひとつに「ギムナジウム」があります。「ギムナジウム」の特徴は、卒業試験を受けて合格すれば、大学の入学資格を得られことです。

では、この「ギムナジウム」と日本の中学や高校とは、どのような違いがあるのでしょうか。

今回は、ドイツで二人の育児をしている私の経験をもとに、ドイツのギムナジウムと中学と高校の違いを紹介します。

【この記事をおすすめの方】
〇「ギムナジウム」と日本の中学や高校との違いを知りたい方。
〇「ギムナジウム」ではどんなふうに子供たちが勉強をしているのか知りたい方。

「ギムナジウム」と日本の中学・高校との違いとは?

「ギムナジウム」とは、小学校を卒業した子どもたちが進学する学校で、最終学年では大学の入学資格を得られる「アビトゥーア」という試験を受ける学校です。

日本の中学や高校と比較されることの多いギムナジウムですが、中学や高校とはどのように違うのでしょうか。

ばどほん

私の子どももギムナジウムに通っています。ママ目線で、日本の学校との違いを紹介していきます。

第二外国語が6年生から始まる

ギムナジウムに入学するとまもなく、第一外国語と第二外国語の2つの外国語の学習します。第一外国語は5年生から、第二外国語は6年生か7年生のどちらかで始まります。

選択科目として、第三外国語を学ぶことができるギムナジウムもあります。
ばどほん

そんなに外国語を勉強して、こんがらがったりしないのかしら?(ドイツ語だけで苦戦している私としては、考えられない…)

英語学習は小学校の3年から始まっていますが、小学校で学ぶ英語は外国語を学ぶ楽しさを重視した授業です。数字を覚えたり、歌を歌ったりなど、遊び要素が盛り込まれた授業内容です。

ギムナジウムでは、本格的な外国語学習が始まります。ドイツでも英語は重視されているので、第一外国語に英語を必須科目として選択させるギムナジウムが多いのですが、その一方で、第一外国語に英語以外の語学を学べるギムナジウムもあります

英語以外に学べる外国語は、フランス語やスペイン語、ギリシャ語のほかに、古典語にはラテン語が挙げられます。

死んだ言語「ラテン語」が学ばれる理由

今では使われていないので「死んだ言語」と揶揄されることもある「ラテン語」ですが、今でもラテン語を学べるギムナジウムはたくさんあります。その理由は主に3つあります。

ラテン語を学ぶ3つの理由

  • ラテン語を学んでおくとフランス語やスペイン語、イタリア語など別の外国語を学びやすくなる。
  • ラテン語の学習を通して論的に物事を考える力が養われる。
  • 史学や医学などの一部の大学の学部ではラテン語が必須になっているので、ギムナジウムでラテン語の学習を始めると有利。
ラテン語学習への評価が高い一方で、やはり「死んだ言語」なので実用性を感じられないのも事実です。そのため、フランス語やスペイン語を第二外国語として選ぶ生徒の方が多いでしょう。
ばどほん
なかにはラテン語が必須というギムナジウムもありますよ!

夏休みに宿題はない!

日本の学校では夏休みや冬休みの休暇中にも宿題が出ますよね。しかもその量は決して少なくはないわけですが、ドイツでは休暇中の宿題は出ません

日本人からすると夏休みに宿題が出ないと、

  • なにも勉強しなくてもいいの?
  • 宿題がなかったら勉強したことを全部忘れちゃうんじゃない?

と不安になるのですが、休み中は勉強のことを忘れて思いっきり楽しもうというのがドイツ流です。

「休暇中は勉強をしないで好きなことをして過ごして、学校が始まったら勉強に集中する」というメリハリがあるのが学校生活になります。

留年がある

日本でも高校での留年を聞くことはありますが、中学では珍しいのではないでしょうか。でもドイツのギムナジウムでは入学して間もない5年生や6年生でも留年はあります。

留年する理由は、勉強についていけない、病欠が多くてゆっせき日数が足りないなどさまざまです。

留年する人数は決して少なくなく、あるバイエルン州のギムナジウムで入学時の学生の数と卒業時の人数では、7割にまで減ってしまったという例もあります。これはさすがに極端な例なのですが、大概のギムナジウムでクラスの人数は学年の低いほどクラスの人数が多く、学年が上がっていくとクラスの人数が減るピラミッド的な傾向があります。

私の子どものクラスでは、6年制に進級したときに、ある生徒が留年して一人抜け、その代わりに1学年上の子が降格して編入してきました。でも、なぜか二人の苗字が同じ⁈
実は、この二人は兄弟でした。同じタイミングで留年したんですね(笑)

留年した生徒への周りの反応

留年は珍しいことではありません。ですから、周りの生徒も慣れています。留年したことが理由で、非難されたとか、いじめられた、といった話はあまり聞きません。

単に留年を事実として受け止めている生徒が多いと思います。

【留年してよかった理由】
「留年」というとネガティブにとらえがちですが、見方を変えれば「その生徒の学力に合わせたクラスに行くことになるので悪くない」とも考えられます。
留年して同じ学年をもう一度繰り返してしっかりと学び直す方が、その生徒の将来にとっていいことだというポジティブな考え方です
少なくとも私の周りには、そのような考え方をしている親や生徒が一定数います。

卒業試験に「アビトゥーア」がある

ギムナジウムは卒業試験に「アビトゥーア(Abitur)」と呼ばれる試験があります。

「アビトゥーア」は最終学年に行われる試験で、この試験の成績と、アビトゥーアで受験した科目と同じ科目の過去2年間の学校での成績をもとに出された卒業成績を添えて、大学に出願します。

5日間続き、課目によっては5時間ほどにもなる厳しい試験として知られています。

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まとめ:「ギムナジウム」とは学びと遊びを両立させる学校生活

私は「ギムナジウム」は学ぶときと遊ぶときのメリハリがある学校だと思います。休暇中に宿題はなく、その間は思いっきり遊んでのんびりしましょうという姿勢がうかがえます。しかし学校が始まれば、授業についていけなければ留年もあったり、難しい卒業試験も控えていたりするので、生徒はしっかりと学習しようという姿勢が見られます。

「学ぶときには学び、遊ぶときには遊ぶ」

そんな学校生活を送れるのが「ギムナジウム」だと思います。

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