アドラー心理学では、子どもを褒めないで育てるという育児法があります。子どもを褒めないで育てたら、可愛げのない心の冷たい人になってしまいそうなのですが、実際にはどうなのでしょうか。
この記事では、アドラー心理学での褒めない・怒らない育児法を解説します。子どもを褒めないとはどういうことなのか、褒めないのならどのような接し方をするかなどを紹介します。
褒めない育児があると知った時の感想
褒めない育児があると聞いた時、とても驚いたのですが、その内容を知り「褒めない」の意味がわかると納得したことが多かったアドラー式の育児法。アドラー式育児がすすめる子どもが10歳までに実践したら、しっかりと自分で物事を考えらえる子どもになるのではないのかと思えました。
アドラー式育児の目指すところとは?
育児の目的は「共同体感覚を高めて子どもを自立させること」
アドラーが考える育児とは、「子どもの共同体感覚を高めて自立させること」です。早速、いくつかのキーワードが出てきているのですが、共同体感覚とはどのようなことでしょうか。
「共同体感覚」で社会との関わり方を意識する
共同体感覚とはアドラー心理学でにおいて重要な概念のひとつで、「自分らしくありながら、ほかの人を認めて、自分とほかの人によって作られる社会「共同体」のなかで自分の居場所を見つけられると感じられること」のことです。アドラーの言う「共同体」とは、家族、住んでいる地域や学校、職場だけのことだけではなく、国家や人類、動植物や無生物などすべてのものが含まれています。
共同体感覚を高める方法
この共同体感覚を高めるにはどうしたらいいのかというと、次の3つのステップがあります。
ステップ①「自己受容」:自分のことを好きになる
ステップ②「他者受容」:他人のことを認める
ステップ➂「他者貢献」:貢献して実感する
この3つのステップすべてを満たされることで、共同体感覚が高まります。この3ステップは、育児に限らず「人が幸せになるための条件」だとも言っています。
アドラーの考える子どもの自立は自分で物事を考えられること
共同体感覚が高まると、子どもは自立へと導くことができます。では、子どもが自立するとはどういうことなのでしょうか。
子どもの自立とは、次の事柄を満たしている状態です。
【自立とは】
- 保護者から精神的に離れて
- 自分を信頼できて
- 他者や社会と関係を築いて生きていくこと
子どもの自立について、上記のような3つの視点が挙げられることから、私は次のようなことを考えました。
アドラー式の子どもの自立について思うこと
アドラーは、子どもの自立とは、親から精神面で離れて、自分のことを信じられるようになれば、自分で物事を考えられるようになり、それを行動に移していけるようになるのではないか、と。またその考え方は、自分さえよければいいといった自己中心的な考え方ではなく、周囲との関係も意識して考えるようになるのではないかと思いました。
では、子どもが自立するようにするために、具体的にはどのようなことをすればいいのでしょうか。
アドラー式の育児の方法とは?
アドラー式育児とは「褒めない、怒らない、でも子どものやる気を出させる育児」
アドラー式の育児では、子どもと褒めないのと同時に、怒ることもしません。そうすることで、子どもは誰から言われることはなく、自分で考えて人のためにいいことをしよう、喜んでもらえることをしようと思うようになります。つまり、子どもはやる気が出てくるので、自立へと促されていきます。
では、なぜ子どもを褒めずに、または怒らずにいると、やる気が出て自立へと向かうのでしょうか。
アドラー式の褒めないことや怒らないことなど細かく見ていきましょう。
子どもを褒める代わりに親の気持ちを伝える
アドラー式育児では、子どもを褒める代わりに、親の意見や感想、思っていることを伝えます。
例えば、子どもが食後の片付けで使ったお皿を食卓から台所まで持ってきてくれたとします。その時に、「○○ちゃん、すごいな」「○○ちゃんは、えらいね」のように褒めません。その代わりに、「お皿を持ってきてくれてありがとう」「助かるわ」のように、その行為についての自分の気持ちを伝えます。
そうすることで、子どもは自分のしたことで相手を喜ばせたのだと知って嬉しくなり、次には自分で相手を喜ばせるために何ができるのかを考え始めます。これが、自分で考える力を養い、また相手との信頼関係も築けて、自立へと導かれるのです。
褒めるのならほどほdに
でも、アドラーも褒めることを禁止しているわけではありません。子どもを褒めてもいいのですが、その加減が大切だと言っています。
褒める程度の行いでもないのに大げさに褒めたり、褒めることばかりが習慣になっていたりすると、子どもは褒めることに慣れてしまいます。そうなると、褒められない状況がその子どもにとっては不自然となります。例えば大人になってあまり褒められないような環境になるとその環境に適応的なできなくなってしまいます。
さらに褒められることに慣れていると、自分基準で物事を考えずに、相手にどう思われるのかということばかりを気にする他人の顔色をうかがう人になってしまうというのです。
だから、褒めるにしてもほどほどにして、褒め過ぎないことをすすめています。
子どもを怒るときは感情的に怒らないで
子どもを怒るのが日常的になってしまっている親もいるかと思いますが、怒るときは感情的にならないように気を付けたほうがいいでしょう。気分に任せてむやみに怒れば、その子のやる気をなくさせてしまいます。ましてや、その子どもの人格をののしったりするような怒り方をしたら、その子は深く傷ついてしまうでしょう。
子どもがいつまでも宿題をしないのを見て、「早く宿題をしないの」「なぜ宿題をしないの」と執拗なまでにしかりつけては、子どもは行き場を失ってしまいます。さらに「あなたはなんてだらしない子なの。どうしようもないわね」と、宿題をしないことを責めるのではなく、その子どもの性格や特質を攻めるような言い方をすると、子どもは人格を否定されてしまったような気持ちになります。
アドラー式の育児では「勇気づけ」が大事
アドラー式の育児では、褒めるよりも自分の意見を伝えてその子どものやる気を起こさせること、人格を否定するほどに感情的に怒らないことなどを実践していきます。これを「勇気づけ」と呼び、こうした褒めない・怒らない育児により、子どものやる気を引き出します。
アドラー式の育児は10歳までに行う
アドラー式の育児法は、子どもが10歳までに行うことが推奨されています。なぜなら、アドラー心理学では子どもの性格は10歳までに形成すると考えられているからです。
まとめ
アドラー式の褒めない育児とは、子どもを褒める代わりに親の意見や思っていることを伝えることで、子どもが自分のことを認められるようになり自信がつき、自立がうながされるという育児です。
「褒めない育児」という言葉が独り歩きしているように感じられるのですが、そうではありません。褒めることを禁止しているわけではなく、褒めてもいいけれどほどほどに、それよりも親の思っていることを伝えることを推奨している育児法でした。
子どもに「○○ちゃん、すごい」「○○ちゃん、天才」という言葉をかけてもいいのですが、それ以上に「そんな○○ちゃんを見れて嬉しい」というように親の気持ちを伝える親子の関係。私はそこにポジティブさを感じ取れました。子どもを褒めるだけで終わらず、私の気持ちも言葉にすることで、その喜びをより深く噛みしめられるなと思ったからです。親である私も子供と同じように喜べる育児と考えたら、アドラー式の育児法は悪くないなと思えました。
私も実践してみようかと思ったのですが、うちの子はすでに10歳。ちょっと遅いかもしれませんね。
最後まで読んでくださってありがとうございました。