なぜヘルメット?ウクライナに武器提供できないドイツの縛り

緊迫しているウクライナ情勢。そんな中、ドイツはウクライナを支援する目的で、軍用ヘルメット5000個を提供することを2022年1月26日に発表しました。しかし、この支援に対して、「ein absoluter Witz」、つまり「究極の冗談」といった意味のコメントを、ウクライナの首都キエフのクリチコ市長がビルド誌に答えています。

ウクライナがドイツに求めていた支援は、ヘルメットではなく兵器。それなのに、どうしてドイツは兵器を提供しなかったのでしょうか。

その理由は、ドイツとロシアの関係にカギがありました。

この記事では、なぜドイツがロシアにヘルメットを提供する理由を解説します。

なぜドイツがウクライナにヘルメットを支援した?

ドイツからのヘルメット提供に失望するウクライナ

2022年1月26日、ドイツのクリスティーナ・ランブレヒト国防相はウクライナに、軍用ヘルメット5000個を提供すると発表しました。ウクライナの自己防衛を支援するのが目的です。

しかし、ヘルメットはウクライナが望んでいた提供品であったのかと言うと、そうではないようです。

国境沿いに戦闘準備を進めているロシアに対して、ウクライナは軍備として軍艦などの兵器をドイツに求めていました。ドイツが世界4位の武器輸出国であるという点でも、理解できる要望であると言えます。

ところが、ドイツがヘルメットを提供するという発表を受けて、ウクライナは失望しました。

キエフのクリチコ市長はビルド誌のインタビューで、次のように語りました。

„Die Verteidigungsministerin hat offenbar nicht verstanden, dass wir es mit einer perfekt ausgerüsteten russischen Armee zu tun haben“… „5000 Helme sind ein absoluter Witz.“

(意訳)「国防相はわたしたちが完璧に軍備を整えたロシア軍を相手にしていることをわかっていない。…5000個のヘルメットなんて冗談が過ぎる」

Deutschland schickt 5000 Helme in Ukraine: Kopfschütteln über Lambrecht-Vorstoß – Politik Inland – Bild.de

さらに続けて、

“Was will Deutschland als Nächstes zur Unterstützung schicken? Kopfkissen?“

「ドイツの次の支援は何ですか?枕?」

冗談も交えて、クリチコ市長はかなり冷ややかなコメントを残しています。

ドイツはロシアを刺激したくない

ドイツはなぜ兵器支援を行わなかったのでしょうか。

その理由は、兵器によるウクライナ支援をしてしまうと、ロシアを刺激することになり、減算進めているドイツとロシアを結ぶ天然ガスのパイプライン「ノルド・ストリーム2」が暗礁に乗り上げてしまう危険があるからです。

ドイツとしては、この計画を進めていきたいので、明らかなウクライナ支援はドイツにとって困った事態になりかねないのです。

アメリカがパイプラインを開通させないとロシアに警告

ここで、いつもの如く、出しゃばってくるのがアメリカです。

ばどほん
失言…かな

アメリカがこのウクライナ情勢に歯止めをかけるために、このパイプラインを利用します。

ロシアにウクライナ侵攻をすれば、「ノルド・ストリーム2」の開通を阻止するというのです。

「ノルド・ストリーム2」はドイツにとっても必要としている計画ですが、ロシアにとっても大きな利益をもたらすはずなので、ロシアとしてはこの計画をすすめたいのです。

さらに西側諸国も、ロシアがウクライナに侵攻すれば、経済制裁を行うと表明しています。

米と独でロシアのウクライナ侵攻を止められるのか

ここで、大きな疑問が浮かびます。

アメリアは「ノルド・ストリーム2」を開通させないと言っていますが、アメリカにその権限があるのでしょうか。

アメリカはドイツと協力することで、このプランを遂行しようとしているので、アメリカではなくドイツが「ノルド・ストリーム2」の開通を止めるということはできるでしょう。ただ、ドイツとしては「ノルド・ストリーム2」の開通を望んでいますから、このロシアに対する脅しは通用するのか、しないのか。そもそも、これが脅しとして通用しているのか、という大きな疑問が出てきます。

現在のところ、ドイツは「ノルド・ストリーム2」の開通阻止を脅し文句として使うことは表明していません。

ロシアはウクライナとの国境付近に軍備を増強しているにもかかわらず、侵攻する予定はないとしています。

 

今後のウクライナ情勢がドイツを巻き込み、またアメリカや西側諸国がどのような反応を示していくのか、今後の展開に目が離せない状況です。

 

参考: