なぜドイツのパンはライ麦パン?ドイツパンの歴史と日持ちする理由

ドイツ在住の私が普段食べている黒っぽくてちょっと酸味のあるパン。これはライ麦が原料に使われているパンです。

栄養価が高いパンとして注目を集めて、健康志向の高い日本では「ドイツのパン」を売るパン屋さんも増えていると聞いています。

ドイツでは小麦粉系よりも断然、ライ麦系のパンが好まれているのですが、では、なぜドイツではライ麦系のパンが多く生産されるようになり、人気のパンとなっているのでしょうか。

今回は、なぜライ麦系のパンがドイツで生産されるようになったのか、その歴史を紐解いていきます。また、ライ麦系のパンが日持ちする理由も解説しますので、参考にしてみてください。

【この記事をおすすめの方】
〇 なぜドイツではライ麦パンが作られるようになったのか起源を知りたい方。
〇 ライ麦パンが日持ちする理由を知りたい方。

なぜドイツではライ麦系のパンが多いのか?

小麦よりもライ麦のほうが育ちやすい土壌と気候だったから

5~6世紀ごろのことですが、現在のドイツがある地域では小麦とライ麦の両方が栽培されていました。しかし、小麦とライ麦では育ちやすい土壌や気候が違うため、栽培されていた地域が異なりました。

ライ麦と小麦の栽培されていた地域

  • ライ麦:
    ライ麦は砂地で涼しい気候でよく育つ植物です。そのため、北部の国々で育てられていました。
  • 小麦:
    小麦は夏場は乾燥し冬には雨がたっぷり降るような気候でよく育ちます。当時は、アルペン地方などの南部で育てられていました。

現在のドイツがある地域ではライ麦が主に育てられていたことから、ライ麦系のパンが作られるようになったのです。

“高級品”の小麦粉を使った白いパン

ライ麦パンが主流であったドイツでも、小麦粉を使った白いパンの波が押し寄せてきました。

フランス革命の頃、ヨーロッパ南部から小麦粉を使った白いパンが伝えられてきたのです。そのパンは貴重だったので、「高級な品」として扱われました。誰でも手に入れられるパンではなく、権力者や金持ちなどの一部の人だけが手に入れることができたのです。

それが少しずつ一般の人々にも広がっていき、いつしか権力のある人が食べるパンは白いパン、何の権力もない人が食べるパンは黒いパンといったイメージがついていきました。

現在では栄養価の高いライ麦パンが人気

現在のドイツでは、白いパンを高級品として扱うことはありません。が、白いパンは日曜日などちょっと特別な日に食べるものという習慣があります。

普段は切り分けるタイプの大きなパンを食べていても、日曜日の朝食やサンデー・ブランチでは、「ブロットシェン」と呼ばれる食べ切りサイズの小さなパンを食べる習慣が。その定番が「白いパン」です。

でも平日は、ライ麦系のパンを食べることの方が多いでしょう。伝統的に食べてきたからという理由だけでなく、「黒いパンは体にいい」というイメージが定着していることも手伝っているようです。

ライ麦系のパンは繊維質やマグネシウム、亜鉛、さらにビタミンB1などのビタミン類も豊富に含まれています。

毎日食べるパンだからこそ体にいいものを食べたいという気持ちはドイツでも変わりません。そのため「黒いパン」の人気は衰えていません。

噛みしめるほどに味があるライ麦パンですが…

いくら健康的といっても、おいしくなければ毎日食べたくはなりませんよね。ライ麦パンと呼ばれる「ローゲンブロート(Roggenbrot)」はライ麦の量が90%以上使われています。ライ麦の配合が高いパンは栄養価も高くていいのですが、ライ麦独特の味や香りが強く、実がギュッとしまっていて歯ごたえもしっかりしています。

ばどほん

噛みしめるほどに味が出てくるようなパンですよ。

噛み応えがあると言えば聞こえはいいですが、薄くスライスしなくては固くて食べにくいパンとも言えると思います。また味が濃いのでバターをたっぷり塗り、サラミやクリームチーズなど味が濃いものと合わせると美味しく食べられるのですが、軽い口当たりでさっぱりと食べたいという人にはあまり向かないパンです。

つまり、「ローゲンブロート」は好みの分かれるパンなのです。

ばどほん
食べ慣れると手放せなくなるようなお味のパンなのですが…

ライ麦と小麦粉の混合パンが人気

ローゲンブロートは味がきつすぎると考えるのはドイツ人も同じようで、実は、ドイツではローゲンブロートよりもライ麦と小麦粉を混ぜたパンの方が多く生産されています。

例えば、次のようなパンです。

  • 「ミッシュブロート(Mischbrot)」:ライ麦と小麦粉の分量が同量のパン。
  • 「ローゲンミッシュブロート(Roggenmischbrot)」:ライ麦が51~89%使われているパン。

「ミッシュブロート」や「ローゲンミッシュブロート」は、小麦粉を混ぜることで軽い食感を生み出しながら、同時にライ麦の栄養価もとりいれた、言わば、「小麦粉とライ麦のいいとこどりをしたパン」だと言えるでしょう。

ママさん

ローゲンブロートも試してみたいけど、最初はミッシュブロートの方がいいかな。

ばどほん

嬉しいですね、そう言ってもらえると。私もよく食べるのがミッシュブロートの方です。

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ライ麦系のパンが日持ちする理由は?

ライ麦パンは日持ちすると言われています。

ばどほん

私の個人的な感想では、5日ほどすると味が落ちてくるなと感じます。

小麦粉系のパンは3日もすると味が落ちてくるのではないでしょうか。また室温で保存していると、カビも生えやすいですよね。

小麦粉系のパンと比べると、ライ麦パンはなかなかカビが生えてきません。

では、どうしてライ麦パンはそれほど長く日持ちするのでしょうか。その理由は使われている酵母とpH値が関係しています。

ここからは、ライ麦パンが日持ちする理由をみていきましょう。

天然酵母「サワー種」がパンを長持ちさせる

ライ麦系のパンには「サワー種」と呼ばれる天然酵母が使われています。サワー種はライ麦を自然発酵させて作られる酵母で、酸味があります。

ライ麦系のパンがほんのりと酸っぱいのは、この「サワー種」が原因です。

また「サワー種」は乳酸菌酢酸菌を持っています。この乳酸菌と酢酸菌が、パンを長持ちさせてくれます。なぜならこの二つの菌はカビの繁殖を抑えるという働きがあるからです。

pH値が酸性に傾いていることも関係が

また、ライ麦系のパンのpH値が酸性に傾いていることもパンを腐りにくくさせている理由のひとつです。

サワー種のpH値は3.3~4.0、ライ麦パンのpH値は4.0~5.2と酸性側に傾いています。一方、パンを腐らせる腐敗菌のpH値は7.0~7.5だと言われているので、ライ麦系のパンは腐敗菌が活動しにくいpH値だと言えます。

pH値が低いことも、ライ麦系のパンを傷めさせずに長くもたせることができるのです。

ばどほん

酸味のある酵母がパンの日持ちに関係しているのなら、あの独特のパンの酸味もありがたく思えてきませんか。

【参考】
Deutsches Brotinstitut e.V.「Historische Informationen」
Zentrum der Gesundheit「Roggen: Bodenständig, intensiv und gesund」

まとめ

ドイツのパンにライ麦パンが多い理由や、ドイツで人気のパンの種類や適切なパンの保存法を紹介しました。

今回の記事内容をまとめると次のようになります。

  • ドイツはライ麦がよく育つ風土だったので、ライ麦パンが作られるようになった。
  • ライ麦パンよりも小麦粉ベースの白いパンが貴重品として扱われたころもあった。
  • 現在では、栄養価の高いライ麦パンが人気。
  • 小麦粉を混ぜたライ麦系パンなら食感も軽く食べやすい。
  • ライ麦パンの天然酵母がパンを日持ちさせる。

いくら栄養価が高くて健康的だと言っても、ライ麦パンはクセのあるパンであることは変わりません。でも、小麦粉を混ぜてちょうどいい配合にすれば、ライ麦パンも食べやすいパンに生まれ変わります。

街でライ麦パンを見かけたら、ぜひトライしてみてください。その時は、ドイツ人のようにたっぷりバターを塗って、ハムやサラミ、チーズなどと一緒に召し上がってみてもいいかも。病みつきになるかもしれませんよ。

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