この子たちのひとりでも、いやいや練習をしている子がいるんだろうか…。
そんな疑問を抱いたコンサートでした。
あるプロフェッショナルのピアニストがインタビューで、「子どものころはレッスンが嫌で嫌で、さぼることばかり考えていた。母親が言うから、仕方なくレッスンを受けていたんだ」と答えていたのを思い出しました。
かつて私も楽器を習っていたことがあり、当時の苦い思い出と重ね合わせました。それでも、と思ったことは、
「それでも、こうしてプロになる人たちもいるんだ」
このあたりの忍耐の違い、いえ、才能の違いも見せつけられました。
精鋭たちが競演するコンサートは想像以上に楽しい
偶然、通りかかったその会場で開かれていたコンサートは、「Preisträgerkonzert Jugend musiziert」と言います。「Jugend musiziertの受賞者コンサート」ということでしょうか。
この業界(?)のことは全く無知なのでよくわからないのですが、司会者の説明からすると、これは地区選抜終了後の発表会のようです。このコンサートに出演しているのがファイナリストたちで、約1か月後に開かれる州大会(日本でいう都大会や県大会)のような大きな大会に出場することになるそうです。
つまり、このコンサートたちは壮行会のような意味合いも含まれている発表会で、私のような素人からすると、このエリアで楽器上手なティーンズが演奏をしてくれるという古都らしいのです。
ピアノにヴァイオリン、トランペットやトロンボーンなどの四重奏に、クラリネットの二重奏もあります。交互にいろんな楽器の演奏が聴けるってだけでも珍しいタイプのクラシックコンサートです。
さすがはファイナリスト
どこかの音楽教室の発表会とはちょっと趣が違いました。さすがは、ファイナリストたち、落ち着き方が違いますし、風格とでもいうんでしょうか、ステージの登場の仕方からあいさつの仕方、ポジションについて演奏を始めるまでのほんの1分足らずの間に、なんとなくプロっぽさが垣間見られます。将来はプロになると決めている子も混ざっているのではないでしょうか。
女性は黒っぽいロングドレスに身を包み、男性も全身を黒でバシッと決めています。楽器の演奏が始まったら、もうその世界に入り込める集中力を持ち合わせている子どもたち。ベートーベンにリスト、ドビュッシー、どれもクラシック音楽なのですが、個性的な楽曲が並びます。しかも超絶技巧ものも混じっている!
見た目からすると10歳くらいかなと思える子が、『ラ・カンパネラ』を弾き始めたりして。おいおい、やめておいたら、と観客の後ろのほうから突っ込みを入れてしまいましたが、どうでしょう。繰り返しますが、さすがはファイナリスト。超難曲を人前で聞かせるレベルにまで仕上げてくるんですよね。ここまで仕上げるには、毎日、何時間と練習しているのでしょう。しかも学校にも通いながらここまで技量を高めて、ティーンズでこのレベルの楽曲の楽曲解釈もしてくるんですから、いやあ、恐れ入りました。
「好き」がまっすぐに伝わってくる
このコンサートのいいところとは、楽器演奏が上手だなあと感心するだけで終わらないところです。彼らの努力に支えられた音楽が好きという気持ちが、観客のほうにまですっきりと伝わってくることです。これはプロにはない素直さです。この素直な意思伝達が、こちらの心も熱くすると言いますか、いいよね、何かに打ち込んでいるってと思ってしまいます。
こういうのを青春というのかなあ。
こちらまで幸せな気分にさせてくれます。
不覚にもティーンズに励まされた
コンサートからの帰り道、頬を冷たい風が打ち付けてきました。肌寒い暗い街道ですが、私は遠くを見ながら歩いていました。顎もいつもより少し上に向いています。
自分の中での何かが変化していることに気づきました。偶然通りかかって勢いで入ってしまったコンサートでティーンズの演奏を聴いて、不覚にも私は励まされていました。諦めるのはまだ早いぞ、と青春ぶってる自分がいたのです。
感化されてるぞー、います。
「いいっすねえ、若いってさぁ」