9時58分。
「あれ、今日は教会に行かないの?」と、私は長女に問いかけました。日曜日の遅い朝食を取るために食卓に着いていました。私はまだ寝ぼけ眼で、子どもと主人が朝食を準備してくれたのです。
「今日は…」と、長女が言いかけた時、
「そっかぁ」と答えを先取りして、
「今日は子ども礼拝に行くのね。11時スタートだったわね」
と、私。話はそれで済むはずだったのですが、次女が教会に行く時に、「ヘフトを持って行くんだ」と嬉しそうに言ったのを皮切りに、話がおかしな方向に進み始めました。
「ヘフト」の勘違い
コロナで「ヘフト」=「コロナテストの証明書」になった
「ヘフト」とはドイツ語の「Heft」のことで、小冊子やノートなどを指した言葉です。
「ヘフトって、テストヘフトのこと?そうね、その方がいいね」と大きなリアクションもせずに私は答えたのでした。
コロナが流行する以前では、ヘフトと言えば、大概の場合、学校で使うノートを指していました。しかし、ここ最近では、ヘフトと言ったら「テストヘフト」になりました。
「テストヘフト」とは学校で受ける新型コロナウイルスの簡易テストの結果を記した紙のことで、この結果は公共の施設やレストランなど、コロナ検査の結果を示さなくてはならない場でも有効的なオフィシャルな用紙です。
でも、彼女が言った「ヘフト」とはテストヘフトではなく、以前、教会でもらった小冊子を自分なりに仕上げたもののことで、それを教会関係者に見せたいから持っていくということでした。すると、
「ヘフトはいつも持って行かなきゃいけないのよ」という長女の横やりが入りました。
「ヘフトは大切なの。いつでもどこでも持っていくものなのよ。そうしないとね、警察が見つけたら、罰金を払わなきゃいけないのよ」
罰金!
罰金!
なんだか、恐ろしい展開になってきました。いくら流行り病で、世界経済も陥れている厄介な病気ですが、コロナのために罰金を支払わされるという事実を思い出した途端、一瞬、沈黙が流れました。会話のトーンが一段下がりました。ヘフトを持っていくという小さな話が、大きな話に広がり始めています。
でも、こういう時に頼りになるのが主人です。
「おい、罰金と言っても、子どもなんだから大丈夫だよ。コロナテストの検査結果を証明できないということで注意される程度だよ」
せっかくその場を救ってくれたはずなのに、こういう時に茶々を入れるのが私の悪い癖。
「でも、どうしよう。教会から帰ってきたと思ってドアを開けたら、ふたりの警官に連行されていたりして」と笑い出し、ここで悪乗りしてくるのは主人で、
「手錠なんかかけられていて」と大笑い。
でも、このストーリーの主人公にさせられた次女はたまりません。
「え、捕まるの?え、え」
こんな風に10歳にもならない娘をいじってはいけません。悪い親です。「そんなことにならないよ、大丈夫よぉ」と、フォローしておきました。
コロナをネタに盛り上がるなんて、コロナに苦しめられている方々には大変失礼な話です。しかし視点を変えれば、日曜日の朝の穏やかに過ごせる時間に、コロナで話題が弾むというのは、それだけコロナが私たちの日常に入り込んでいるという証明のようなものではないでしょうか。
これが私たちの日常なのだと自覚させられました。
「コロナで罰金」というのは本当の話
長女は「コロナで罰金」と大げさに話していましたが、新型コロナウイルスに関する罰金は、冗談ではなく存在しています。
ドイツにお住まいの方はご存知かと思いますが、とりあえず確認のため。
最高罰金額は2000ユーロ
私が住むフランクフルトのあるヘッセン州を例にとると、次のような罰金があります。
事業者などではない一般の人の場合、最も厳しい罰金は2000ユーロです。変異株蔓延地域(Virusvarianten-Gebiet)からドイツに入国した人が検査義務等にしたがわなかった場合に課せられる罰金です。
日常生活にかかわる例で言えば、レストランなどで陰性証明書の提示が義務付けられている場所で証明書を提示できなかった場合は、200ユーロの罰金です。
医療用マスクをしていなかったり、公共交通機関を利用している際に陰性証明書類を所持していなかったりすると、100ユーロの罰金です。
他にもさまざまな条例違反が設けられていて、罰金も科せられます。
慣れてくれば規制下でもそれなりに生活できる
コロナを蔓延させないためとはいえ、なかなか厳しい規制があると思えますが、生活している上では、コロナパスはスマホに登録しておけば、それを印籠代わりに生活しているという感じなのでそれほど生活に面倒臭さは感じられません。
ただ、レストランなどでは現状G2プラスルールとなり、コロナパスが印籠にならず、簡易テストも義務付けられるようになってから面倒になりました。
コロナと共生する
コロナだからと怯えて行動を制限させられることは決して面白いことではありません。しかし、我が家のように、コロナでちょっとしたドキドキ話ができれば、それはそれで楽しいひと時になったわけです。
コロナという病との共生はわたしたちの生活の課題でしょう。もうしばらくは慎重に付き合っていかなくてはいけませんから、そんな中でもたくましく生きていきましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。では、また!
【参考】
2021-11-26_vollzugshinweise_stand_25.11.2021.pdf (hessen.de)