ドイツのクリスマスケーキ「シュトレン(Stollen)」。粉砂糖でお化粧したこのお菓子は、ドイツのクリスマスの定番ケーキです。
でも、ドイツのクリスマスマーケットと言ったら華やかなのに、「シュトレン」はクリスマスケーキにしては少し華やかさに欠ける気もしませんか。生クリームもないし、飾りつけも粉砂糖だけ…。
実は「シュトレン」はクリスマス当日だけに食べるお菓子ではありません。クリスマスの1ヵ月ほど前から少しずつ食べていくお菓子なのです。
この記事では、ドイツのクリスマスケーキ「シュトレン」の特徴や名前の由来を解説。また、シュトレンの発祥の地がドレスデンだと言われる理由や、正しい食べ方は手づかみで食べることなども紹介します。
「シュトレン」の特徴と名前の由来とは?
「シュトレン」とは「ドイツのクリスマスの定番ケーキ」
「シュトレン」とは、イーストを混ぜ込んだ生地に、レーズンやレモンピールなどのドライフルーツにアーモンドを練り込んで、たっぷりのバターとミルクで仕上げたケーキです。
個人的な印象ですが、マジパン入りのシュトレンがドイツの人には好まれているように思います。
食べたときの食感は、ケーキというよりも甘いパンといった方が近いでしょうか。ただその生地はきめ細やかですが重めです。
シナモンやカルダモンなどの香辛料も効いていて、食べ応えのあるクリスマス時期に食べられるお菓子です。
ドイツ語の発音は「シュトレン」
日本語では「シュトーレン」と伸ばして発音されることの多いようですが、ドイツでは「シュトレン」と呼ばれています。
ドイツ語で「Stollen」と書きますが、正式名称は「クリスト・シュトレン(Christstollen)」です。
シュトレンの名前の由来は「おむつをしたキリスト」⁈
「シュトレン」に「クリスト・シュトレン(Christstollen)」と名付けられたのは1530年です。
「Christ」はイエス・キリストのことで、「stollen」は古代ドイツ語「stollo」が語源だと言われていて、その意味は「柱」です。
「キリストの柱」と言うとなんだか変な意味ですが、実はほかに名前の由来があると言われています。それは、その柱のような形をしたパンに砂糖で白く飾りつけることで、「おむつをしたキリスト」を思い出させるから、だとか。
ちょっと驚きの説ですが、クリスマスに合っていると言えば合うのかなと思えます。
シュトレンの歴史
シュトレンはクリスマス時期の精進料理だった
シュトレンはもともと修道院でしか食べられないクリスマスのための精進料理でした。シュトレンがいつ、どこで初めて作られたのかははっきりしないのですが、1329年にナウムブルクの司祭がシュトレンについて書き記した記録が残っています。
当時のシュトレンは、バターなしで焼かれていました。教会ではクリスマス時期のバターの使用を禁止していたからです。シュトレンに使われた材料は、小麦粉と水とイースト、そしてオイルのみ。
砂糖も使われていなかったようなので、私たちがいま食べているシュトレンとはだいぶ違った食べ物でした。
バター入りのシュトレンは1490年に許可された
バターが使われるようになったのは1490年にインノケンティウス8世が認めてからです。その後、シュトレンはクリスマスの食べ物として徐々に広まっていきました。
なぜドレスデンがシュトレンの発祥の地と言われるの?
トルガウのパン職人がシュトレンを美味しくしたから
なぜドレスデンがシュトレン発祥の地と言われるのかと言うと、ドレスデンから列車で2時間ほどのところにある「トルガウ(Torgau)」という町のパン職人が、現在食べられているシュトレンの原型を作ったことが由来です。
トルガウに暮らしていたパン職人ハインリッヒ・ドラスド(Heinrich Drasdo)が、お菓子とは言えなかったシュトレンに、ナッツ類やドライフルーツを入れて改良して、美味しく食べられるようにしたのです。
それから約30年して、シュトレンは「クリスト・シュトレン」と名付けられました。
「クリスト・シュトレン」はクリスマスのお菓子として、ドレスデンやその近郊の町のパン屋でも焼かれ始めて、その名が知られていくようになります。
こうした経緯から、シュトレンの発祥の地はドレスデンと呼ばれるようになりました。
EU公認のドレスデン式シュトレン「Dresdener Christstollen」
ドレスデンで作られる「シュトレン」は、ドレスデン式シュトレン、ドイツ語的には「ドレスドナー・シュトレン(Dresdener Christstollen)」と呼ばれます。
でも、ドレスデンで焼かれたシュトレンなら、どれでも「ドレスドナー・シュトレン」というわけではありません。
「ドレスドナー・シュトレン」という名称は、ドレスデンとその近郊にあるパン屋さんやケーキ屋さんで、ドレスドナー・シュトレンの伝統的なレシピを受け継いでいる約130軒だけが使っていいことになっています。
2010年にEUが公認した「ドレスドナー・シュトレン」。古くから伝わるシュトレンを味わいたいのなら、「ドレスドナー・シュトレン(Dresdener Christstollen)」と表記されているものがおすすめです。
ドレスデンでは「シュトレン祭り」も開催
Ready for this giant Stollen cake?🥧
The Stollen is a typical bread originated in the #Dresden region in #Germany 🇩🇪. The Dresden #Stollenfest is the festival to celebrate this amazing specialty.
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ドレスデンでは、毎年第2アドベント(第二主日)に、「シュトレン祭り」が開催されています。シュトレンを焼くパン屋さんたちが巨大なシュトレンを運びながら町を練り歩きます。シュトレンメドシェン(「シュトレン娘」とでも訳すのかな?)も選ばれるそうです。
シュトレンの正しい食べ方と保存法は?
シュトレンは薄く切って手づかみで
シュトレンは1センチほどに薄く切っていただきます。
かなりしっかりめのケーキですから、厚めに切ってしまうと食べにくんですよね。
フォークで食べたくなりますが、シュトレンは指でつまんで食べます。薄く切ったシュトレンを指で持ちあげ、かぶりつきます。手の指に粉砂糖もつききますし、下品に思われるかもしれませんが、それが正しい食べ方です。
シュトレンの真ん中から切り分けていく
パウンドケーキのように端から切り分けていきたくなるのですが、シュトレンは真ん中に最初の一刀を入れて、徐々に端に向かって切り分けていきます。なぜこのような方法がとられるかと言うと、シュトレンを長持ちさせるためです。
シュトレンはクリスマスの1カ月ほど前から少しずつ食べていくお菓子です。毎週やってくるアドベントごとに少しずつ食べていくのですが、時間が経つとシュトレンの断面が乾燥してしまいます。
乾燥を避けるために、シュトレンの断面どうしを合わせてからラップなどにくるんで保存します。
まとめ
シュトレンはドイツでは定番のクリスマスのお菓子です。1カ月近くかけてゆっくりと食べていくのですが、その歴史も同じように長い。700年ほどの時を経て、現在のしっとりとした美味しいお菓子になっていきました。
ドイツではもちろんのこと、日本でもお馴染みになったシュトレン。まだ食べたことのない人はぜひ一度試してみてください。
シュトレンは、日本のクリスマスケーキとは全く違う冬の味覚です。
最後までお読みいただきありがとうございました。では、また。