【レシピあり】「種なしパン」の意味とは?起源や正しい作り方・食べられる祭りも紹介

2021年6月3日は「聖体祭(Fronleichnam)」で、ドイツでは祝日です。この聖体祭は「これはわたしの体」と言って最後の晩餐でキリストが彼の使徒たちにパンを与えたことに由来しています。
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ところでキリスト教の儀式で使われる「パン」とは、私たちが普段食べているパンとは違うことをご存知ですか。
「種なしパン」と呼ばれるクラッカーのようなパンのことを指しています。

今回は「種なしパン」のレシピや「種なしパン」の意味のほかに、なぜ「種なし」と呼ばれて、いつどこで食べられているのかを解説します。

「種なしパン」のレシピ

小麦粉とパンだけのシンプルな「種なしパン」

種なしパンの材料(2枚分)

  • 強力粉 20g
  • 薄力粉 150g
  • 水 50ml

種なしパンの作り方

  1. ボウルに材料を全て入れて、手早く混ぜる。
  2. 生地がまとまってきたら、平台に乗せてこねる。耳たぶ程度の硬さにまでこねる。水分が足りなければ足しながらこねる。
  3. ②を二等分にして、それぞれ約2㎜の厚さに伸ばす。
  4. ③にフォークで数か所、穴をあける。
  5. フライパンで④を両面焼く。

種なしパンを作るときのポイント

ポイント①頑張ってこねる

材料は小麦粉と水だけなので、生地がまとまるまでが大変です。頑張ってこねましょう。

ばどほん
普通のパンを作るようにねちゃねちゃにならないのはいいのですが、生地としてまとまるまでにかなり力を入れてこねる感じです。

ポイント②薄く伸ばす

パン生地はクレープのように薄く伸ばします

ポイント③穴を開けるのを忘れずに

パン生地に穴を開けないと、部分的に膨らんできてしまいます。種なしパンは膨らんでいない平たいパンなので、穴を開けることが大切です。

ポイント④オリーブオイルで舌触りよく

本来の種なしパンにオイルは入れないのですが、紹介した材料の通りだと口触りはあまりよくないパンになります。

食べやすくするための工夫として、オリーブオイルを大さじ3ほど入れてもいいでしょう。

「種なしパン」とは?

「種なしパン」とは発酵させないパンのこと

「種なしパン」とは発酵させないで作ったパンのことです。そのため、材料にパン生地を発酵させるイーストは入りません。

「種なしパン」はイスラエル料理で「マッツァ」と呼ぶ

「種なしパン」はイスラエルで「マッツァ(Matzah)」と呼ばれます。ユダヤ教のお祭りである「過越祭」や「種なしパンの祭り」で食べられます。

イスラエルでは18分以内と決められている

この種なしパンを作るときには、材料を混ぜるところから焼き上げるまでに18分以内という時間制限があります。

イスラエルでは、種なしパンを作るときに賛美する歌があり、その歌を歌いながら作ります

その歌の長さが18分で、この歌を歌い終わるまでにパンも仕上げるのだそうです。

なぜ「種なし」?

イスラエル人が急いでエジプトを出発するため

なぜ「種なしパン」が作られるようになったかと言うと、旧約聖書に記されている「出エジプト」のエピソードに由来します。

【出エジプトの経緯】
エジプトに住んでいたイスラエル人は奴隷状態にあって苦しい生活を強いられていました。そのイスラエル人をヤハウェ(別称「ヤーヴェ」)と呼ばれるユダヤ教の神によって救い出されました。この時、イスラエル人の集団を導いたのが、「モーセ」です。
ばどほん

モーセは海を2つにパッカーンと割ったエピソードで知っている方もいるのでは?

出エジプトの際、イスラエル人は急いでエジプトを出発しなくてはいけませんでした。そのため、食料のパンを発酵させる時間がありませんでした。こうしてできたのが「種なしパン」です。

つまり、「種なしパン」は急いでエジプトを出発するために、やむを得ず作られたパンだったのです。

「種なしパン」はいつ食べられているの?

「種なしパン」はユダヤ教の祭りで食べられる

種なしパンはユダヤ教のお祭りで今でも食べられています。そのお祭りとは、「過越祭」と「種なしパンの祭り」です。

「過越祭」

「過越祭(すぎこしのまつり)」はユダヤ教の三大祭りの一つで春のお祭りです。ニサンの月(3月~4月)の13日の日没に始まります。

「悪霊が門口に子羊の血を塗った家を過ぎ越していった」と聖書に書かれていることが由来しています。

もともとは、遊牧民による魔よけの儀式だったのが、パレスチナの農民が行っていた豊作の祭り除酵祭と、出エジプトのエピソードも結びついて、現在の過越祭になったと言われています。

「種なしパンの祭り」

「種なしパンの祭り」は、過越祭の翌日から7日間にわたって開かれるお祭りで、出エジプトを祝うために開かれます。

毎日「種なしパン」を食べることで、イスラエル人がエジプトを救い出されたことを思い出します。

「種なしパン」はキリスト教の「聖餐式」でも使われる

「種なしパン」はキリスト教の「聖餐式(せいさんしき)」と呼ばれる儀式でも用いられています。

「聖餐式」とは、最後の晩餐でキリストがパンとぶどう酒を自分の体と血だと言ったことにちなんだ儀式で、儀式中にパンとぶどう酒をいただきます。

教会によって、月に1回や毎週など聖餐式を行う回数は違います。

宗教で使われる「パン」は普通のパンじゃなかった

キリスト教でパンをキリストと解釈することを知っている方も多いのではないでしょうか。でも、そのパンは私達が食べているパンとは違い、「種なしパン」だということを知り驚きました。

「種なしパン」は発酵させない上に、塩などのスパイスも入れないので、口当たりはそれほど良くなくおいしいものではありません。しかし宗教的な意味合いもあり、現在でも儀式上で種なしパンは作られ食べられています。

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